あけましておめでとうございます。

旧年中は大変お世話になりました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

年越すまで普通にプラノベ執筆していたので、あんまり実感もなく2008年です。まぁ、多分、今年も創作三昧の一年になることは間違いないでしょう。というか、それ以外の生き方をしようとも思ってませんし、出来るとも思いませんしね。

オン・オフ双方で昨年お世話になった皆さん、どうもありがとうございます。
今年もイヌハク節全開で色々ご迷惑をおかけするかとは思いますが、なにぶんこのようにしか生きられない人間ですので、どうぞ（生）温かい目で見守ってやってくださいませ。
サイトはもう何か再構築するより新しく作った方が早いような気がしてきました……。


あ、それとお年始お茶会ですが、親戚回りでプラノベが終わらせられなかったので今日は開催出来なくなりました。これは今夜と明日の午後を使ってやります……。

三日の夜にやってもいいかなと思ったんですが、多分四日出勤の方もおられるでしょうし（私もです）、もうどうせならいつものように金曜日の夜にしようということで、一月四日（金曜日）の午後九時頃からお茶会を開催したいと思います。その頃には、サンタクロースはもう帰っちゃったけど企画の品も届いてるかな？　よければ、捕獲報告などしてやってくださいませ。安心しますので。


ともあれ、今年も、大好きな創作を大好きな方々と大好きな環境で楽しく元気にやっていけたらと思いますので、皆さんどうぞよろしくお願いいたします（三つ指をついて深々と一礼）。

私はアホです。

のっけから断言風味に今晩は、犬井です。
今日は寒かったですね。犬の散歩中鼻が凍りそうになりました。
でも体調はほぼ元通りになったみたいです。今日は夕飯用に父親が自分のお小遣いで買ったタラバガニ３Lを分けてもらってご満悦でした。そんなにたくさんは要らないけど、少し食べる分には美味しいですよね、カニって。

とりあえず、ピアス＆イヤリング及びブレスレットの発送準備は整いました。明日の朝、中央郵便局に持っていくつもりなので、まぁ、三が日くらいには届くかなぁという感じです。差出人の名前のところに肉球が描いてあったら私です。不審者！　と警戒せず、開けてやってください。

なんにせよ、石の美しさを愛でていただければ幸い。
愛でてくださる方を石は守ってくれると思うのでね。可愛がってやってください。

そんで、タイトルですが。
いや……うん、判る人は判っちゃうかもしれませんが、まぁ、いつものアレです。
ミクシィでも同じこと書きました。
今年最後のお買い物。http://kenkengems.com/にて。
最上段はMUSASHIで買ったチェーン、真ん中は右からトンボ玉、ガーネット、オニキス、ブルーカルサイト、オブシディアン。下段は右からスターローズクオーツ、マルチカラーアクアマリン、ガーネット、カーネリアン、ラベンダーアメジスト。６ミリ丸玉ビーズは、ゴムで通すシンプルな日常使いブレスレット用に買いました。
また何か作りたいです、マジで。

ちなみにこの中で一番高価だったのはマルチカラーアクアマリン（ボタンカット）だったのですが、サイズこそ小さいものの、宝石質のとんでもなく綺麗な青が混じってたりして、ちょっと見てるだけで悦れます。
これをピンとチェーンで繋いだエアリーなピアスとか、綺麗だろうなぁと。ワンランク上の、モルガナイトとかゴシェナイトが混じった方のボタンカットも綺麗だったので、そのうち手を出したいです。いや、一番欲しいのは最上級、トリプルA以上のアクアマリンのラウンド６ミリなんですが。四分の一連で３６８０円か……悩む……。

そしてそれとともに、「やっぱラウンド４ミリももっと要るよな」と、http://beadsner.main.jp/でも色々注文しました。遊色効果のあるいいオパールの小ビーズや、青系の天然石ばっかり買ったような気がします。でも、ブルークオーツすっごい綺麗なんですよ……。
いや、本当は家族でちょっといい料亭？にご飯を食べに行く予定だったのが（そして一部出資する予定だったのが）私と妹が風邪でダウンしたのもあって立ち消えたので、その分のお金いちまんごせんえんが浮いたんですよね。だからまぁいいかと。

ミクシィの日記でも同じことを書きましたが、なんにせよ、今年は自分の好きなように、好きなものをたくさん作ることができた一年でした。わたしの創るもの、作ったもので楽しんでくださったり、喜んでくださった方々に心から感謝すると同時に、来年もまた同じようにたくさんのものを創って行（生）きたいと思うので、どうぞお付き合いのほどをお願いします。

あ、そして、一月三日が締め切りのプラノベがきちんと完了していたら、一月二日の夜十時くらいから新年一日遅れのおめでとうお茶会を開催したいと思いますので、よろしければご参加くださいませ。その場のノリでプレゼント抽選会とかやるかもしれません（単純に石を使って何か作りたいというだけのことですが）。
勿論、例に漏れずプラノベの予約もお受けしておりますので、お入用であれば。ちなみに現在【013】までお受けしております。


ともあれ今年もいい一年でした。
来年も素敵な年にしたいですね。素敵に出来るかどうかは自分次第でしょうし、頑張ります。

それでは皆さん、この一年どうもありがとうございました。
また来年もよろしくお願いいたします。

では、よいお年を。

「人はそれを愛だとか心だとか呼ぶんだろう」

ようやく復活の兆しが見えてきた犬井です今晩は。
でも食欲そのものはまだ減退中。いつもならお腹が減ったらおやつなりなんなり食べるのに、「まぁいいか」とそのまま放置して作業をしてます。コンビニに入っても、いつもなら手が出てしまう邪悪な食べ物（※スナック菓子の類い）もスルーですし、完全復活はまだ少し先のようです。

……まぁ、そもそもSHIBOUがたくさんついている身なので、食べなかったからと言って別にどうなるわけでもないんでね。もうしばらく強制ダイエットしときます。

で、とりあえず連絡というかお披露目というか。
すでにサンタクロースは帰っちゃったけど企画（名前変わっとる）、ブレスレット二種類完成したので写真アップしときます。一応、天然石系のプレゼントは31日に一斉発送する予定。なので、新年にはお届けできるでしょう。Tシャツは田舎で描く気満々なので、冬休み中、という感じでしょうか。

シャノンさんイメージのブレスレット。普段使い用、お守り用ということで、ゴムで石を通したシンプルな作りになっています。
使用したのは、オブシディアン、スモーキークオーツ、クラック水晶、ラブラドライトAAオーバル、カーネリアン、ガーネット。オブシディアンとスモーキークオーツは暗闇、クラック水晶はままならぬ運命、カーネリアンとガーネットは血、そしてラブラドライトは希望のイメージです。オブシディアンには『名誉の保護』という意味もあり、その辺りも引っかけて使いました。
で、手首の太さがどのくらいか判らず、犬井（骨太）より少し大きめに設定したんですが……うーむ、どうだろう。

で、こちらは北條レイラさんイメージのブレスレットです。





繋いでみるとこんな感じ。
ちょっとお出かけ用、ということで、なるべくおっされーな印象になるよう頑張りました。が、そもそも犬井がセンスとか洒落っけとは無縁な人間なので、どうだろうというね。
使用したのは、SA級ラピスラズリ、ラブラドライトAAブルー、ガーデンクオーツ３A、ロイヤルブルームーンストーン３A、アクアマリンAA、アパタイト。あと、ちょっと可愛いチェーン。
シンプルで、かつ、色合いが印象的な石を使いました。レイラさんの潔さをそういうイメージで表現したかったのですが……どうでしょうね。あと、ガーデンクオーツを使ったのは、この石がイマジネーションを刺激してくれるという話を聞いたからです。これは絵を描かれるPLさんのために使いました。って言うか本いただいてもいいんですかマジで嬉しいですアリガトウゴザイマス（スライディング土下寝）！
ちなみに、多分、このブレスレットが一番高価な石てんこ盛りの品になったと思います。まぁ、私にとっては「この石はこの方のもとへ行くべきだ」というインスピレーションが何より大事なことなので、値段とかは関係ありませんけどね。

あー、でも、大好きな石がいっぱい使えて楽しかったです。
私は、天然石＝ヒーリングストーンとはあまり考えておらず、石が持っているという意味合いもあまり気にはしていませんが（まったく気にしないわけでもないです）、差し上げる方を思って石を見る時、私の可愛い子らが、「その人のために自分を使え」と囁くような気がする、あの瞬間は嫌いではないです。それを人はインスピレーションと呼ぶんでしょうね。

とりあえず、楽しかったので、また夏辺り、やります。次も多分、ピアス＆イヤリングとブレスレット（お出かけ用＆お守り用）でしょうかね。石と触れ合ってみたい方、是非ご参加くださいまし。


で、銀コミ。
ご参加どうもありがとうございましたっていうかすでにお二方からきっちりプレイングいただいてますよ早ァッ！？　判りました、たらふく儲けて（日本語おかしい）帰っていただきます……っていうか、総受け本、やっちゃっていいんですかそうですか。18禁描写は出来ませんけど酢を飲んだような顔はしていただけるかと思います。今から森の娘たちにかまさせる腐トークが楽しみで仕方ありません。

ちなみに私はサークル参加は二回か三回しか経験ありませんが、お友達がたくさんいるのでインテックス大阪のイベントにはよく出かけてました。なので、好きなだけ腐トークかましてくださっても問題ないです引きませんダイジョウブ。過去形なのは、今激ハマりしてる某ゲームの本とか買い出したらきりがないので自重しているからです。いや、私一遍踏み込んだらもう戻れないと思うので。そのくらい好きなんですよ絶対自分でも本作るとか言い出すからヤバい。そんな時間どこにあるんだ、自分……。


とりあえず、今年中にプラノベ一本、冬休み中にプラノベ二本と鉄塊都市を何とか出来るよう頑張りたいですが……微妙なところですね。年賀状の宛名入力と印刷が待ってるんですよ……っつか、自分が誰に出せばいいのか判りません。来たら出そうかなぁとか姑息なこと考えてます。去年の年賀状、どこに行ったのかなぁ……。

あ、ちなみにタイトルにはあまり意味はないです。天野月子のアルバム「天龍」内『天』と「A MOON CHILD IN THE SKY」内『花冠』を交互に聴いてたらそんな気分になっただけで。

愛ついでにウチの可愛い子の写真をペタリ。
もう11歳。
長くてもあと10年。
……そう考えるととてつもなく寂しいですね。

煩悩の祭典 IN 銀幕市

文化の極みっていい言葉だよねと呟きつつ今晩は。

高村WRにコラボのお誘いいただいてヤッチマイナーとばかりにセッティングしてしまった銀コミ犬井Ver.ですが、今回はどちらかというと女装よりもコミケのカオスを楽しんでいただくシナリオになりそうです。なので、参加したいけど女装はちょっと……という方は、生身でお手伝いに引きずり込まれたり、一般参加したり、サークル参加したりしていただければと思います。勿論、雄々しく着ていただいてもまったく問題ありませんが。

参加者の皆さんには、是非とも『自分主演のとんでもねーカップリング本』を見つけて酢を飲んだような顔をしていただきたい今日この頃。森の娘たちだけでなく、周囲の腐女子たちも攻め込んでくる予定ですので、CP本関係においては、ムービースターを初めとした、有名人の方々のほうが楽しいことになるだろうと思います。なお、わたくし小学生以下のイベント参加は苦々しく思っているクチですので、出来るだけ義務教育終了設定（高校生以上）のPCさんに来ていただければと思う次第です。いやまぁ、こんなところでまで気にしなくてもという話ですけどね。

しかし、話は変わりますが、腐女子視点で言えば銀幕市ってめくるめく夢の町ですよね。作品超越したスラッシュとか海外では普通ですけど、それがリアルに起こってるわけですから。……そのためだけに移住してくる人とか、いるんだろうか（笑）。

需要があるのかないのか非常に微妙ですが、まぁ……よろしければ。


あ、そして、鉄塊都市のプレイングは今晩零時締め切りですよー。
現在まだ完成していないと思しき方がちらほらおられます。今回も、心情の部分が白紙だと大変描写し難くなりますのでお気をつけくださいませー。

ぬぬぬ。

やっぱり、どうも調子が微妙です。
普段元気なだけに、こういうときぐったりしてしまっていけませんね。
今日も午後から年休を取って帰ってきまして、小説をちょっと書いた後はもうずっと寝ていました。次なるプラノベのお届けは週末以降になりそうです。
企画品のお届けも『冬休み中』くらいのまったりになると思われ。住所下さった方々、どうもありがとうございました。もう少々お待ちくださいませ～。

あ、そして昨日の分のプラノベ、公開されましたね。
オファー、どうもありがとうございました。
私にしては短いお話になりましたが、これはあまりごてごて書くとかえって無粋かなあと思ったので、シンプルかつストレートに書き上げました。気に入っていただけるといいのですが。


あと、以下はなんとなくそんな気になって書いてみた、クリスマス中の廃鬼師たちの一幕。悲壮感がないのは仕様です。固有名詞とかミニ情報とか色々出してみたので、ご参考までに。

　12月25日

　何かの雰囲気を感じて、壱衛はふと顔を上げた。
「どうした、壱衛」
　すぐ隣で、壁にもたれて座っていた十守が、壱衛のそんな動作に反応して首を巡らせる。
「……いや」
　気の所為だったらしく、周囲には何の変化もなかった。
　壱衛は静かに首を横に振り、また意識を都市へと拡散させる。
　――百野は電力消費を抑える低速モードに切り替えて『眠って』いるらしい。
　廃鬼師は普通、都市そのもののはらむ微弱な電力を全身で吸収して永久稼動できるようになっているが、それもシステムを大凶兆に取り込まれてしまえばかなわなくなる。
　攻撃に特化したパワー型である彼は、廃鬼師の中ではもっともエネルギー消費が激しいので、今のような状況においてそれは最善の方法だ。電力消費が激しすぎるとデータを保っていられなくなることもあるから、どちらにせよ早めに手を打たなくてはならない。
　エネルギーが切れた廃鬼師ほど役に立たぬものはないのだ。
　二度三度創ることが難しい優秀な廃鬼師は、ネット内の共有フォルダ【スフィア】にデータが蓄積されているが、それとて今のこの状況下で悠長に再生作業をするわけにもいかない。
「レピドライト集積塔からの交信は？」
「微量だ。微量過ぎて私では受信出来ない」
「だったら、俺たちの誰も、受信出来ないってことだな」
「……大凶兆の胎動がもう少し収まってからでないと無理だろう。あれは電道をかき乱しすぎる」
「千鎖、開錠は出来そうか？」
　十守の問いに、千鎖が壁にコネクタを接続したままで苦笑する。
「壱衛と同感だわ。大凶兆の歪波が収まり、電道と普遍サーキットが落ち着かないことには、わたくしにはどうしようもない」
「……ではオレたちは、もうしばらくはここに詰め込まれたまま、ということか……やれやれ」
「クレイドルの召喚が出来ないどころか、自然充電すら出来ないのでは、休息どころではないからな。――ふたりとも、電力の残量はどうだ」
「基底現実時間で言えば12000分弱と言ったところ、か。廃鬼の襲撃を受ければ更に減少するだろうな」
「わたくしは8000分くらいかしらね……あまり、猶予はないわ」
「切れたら切れたでフォルダに戻るだけのことだが、今は暢気に【スフィア】で休憩している場合じゃあないしな」
「……そうか。何なら私の電力を分けてやる、切羽詰ったときは言え」
「陽炉システムって便利だな。扱いは大変なんだろうが」
「そうね」
　大凶兆を止めるべく奮闘して、どれだけの時間が経ったのか、データ管理はお手の物である廃鬼師たちですら面倒臭くて――その無意味さを理解していて、なのかもしれない――カウントをやめていた。
　状況は悪化する一方で、Solitudeの蔓延は激しく、すでに何十、何百もの『那由多機構』メンバーが廃鬼と化し、大凶兆の一部になった。
　厳重に守られたシャングリ・ラも、決して完璧に安全なシェルターというわけではなく、毒は間違いなくこの世界全体を蝕んでいる。長い長い時間をこの地下世界とともに存在してきた廃鬼師たちには、建造物のひとつひとつ、部品の一欠片一欠片に、毒がにじんでゆくのが判るのだ。
　このままでは、この地下世界は、地上に呪われた贈り物を無理強いする救いようのないムービーハザードになってしまう。
「でも……何故かしら」
　かすかに笑う千鎖には、悲壮さはなかった。
　否、壱衛にも十守にも百野にも、ない。
　彼らには、絶望するという機能がついていないのだ。
　彼らは、この世界が存在する限り、もしくは再生もかなわぬほどプログラムごと粉々にされない限りは、諦めるということが出来ない。
　廃鬼師とはそういう存在なのだ。
「どうした、千鎖」
「ええ。おかしいかしらね、わたくし、少し楽しい気分なのよ。地上の人間たちと言葉を交わすことが出来たからかしら」
「百野も言ってたな、それ。二千年機能してきて『ちゃん』付けで呼ばれたのは初めてだった、って」
「ええ。わたくしそれを聞いて笑ってしまったもの。だから……不謹慎かもしれないけれど、わたくし今、悪くない気分なの」
「オレもだ」
　そう、笑みを交し合ったあと、千鎖はほんの少し哀しげに目を細め、
「……万己は、零覇は、どうかしらね」
　言って灰色の天井、上層階の地面に当たる高い『空』を見上げた。
「絶望することが出来たから、万己は大凶兆になったのかしら」
「絶望だけが理由なら、零覇も大凶兆にならなきゃおかしい。あいつも精神プログラム内に『絶望』が自然発生していたはずだ」
「ああ、そうね。では、何が万己を歪めさせたのかしら。何があの優しい子の願いを歪めてしまったのかしら」
「それが判れば、オレは今頃廃鬼師じゃない何かになってるよ」
　十守が肩をすくめる。
　2500年前のもっとも優秀な技術者が、死んだ恋人に似せて創ったという十守は、長い時間の情報の蓄積もあり、旧仕様の廃鬼師も含めてもっとも人間的な反応をする。肩をすくめるなどという仕草はその最たるものだろう。
「……手を捜そうぜ。何か、あると思うから」
「ええ」
「せっかく、あいつらが、都市再生プログラムを見出してくれたんだ、このままにはしたくない」
「そうね……」
　千鎖がそう微笑んだ、その時、現在彼らが足止めされている階層の空気が明らかに変化した。気温がぐっと下がり、空気が清冽さを増したのだ。
　と、

　ふわり。
　ふわ、ふわり。

　視界を、優雅な羽毛片のような、白くてやわらかいものがいくつもかすめてゆく。
　目を見開いた千鎖がそっと百野を起こし、上空を見上げる。
　空のないこの都市に気候は存在しない。
　そのはずだった。
「なんだ、これは……？」
　十守が不思議そうに純白の舞う天井空間を見上げ、手を差し伸べる。
　壱衛はその物質をざっとスキャンしたあと、舞い降りた白片を金属製の手の平で受け止めた。
「水蒸気が空中で昇華し結晶となって降る現象だ。確か、雪と言ったはずだが」
「雪……」
　旧世界においては冬という季節の代名詞であったらしい気候現象だ。
「どうして、今、ここに」
　両手で雪を受け止め、千鎖が首を傾げる。
　百野は不思議そうに、言葉なく空を見上げている。
「……贈り物、かな」
　十守が目を細めて呟いた。
「贈り物？　誰の？」
「――……『外』からの」
　鉄塊と灰色に満ちたこの世界に、雪の純白はまぶしいほど清浄だった。
　ありえないはずの現象は、局地的なムービーハザードの一種だったのだろうか、確かに、『外』の……地上からの贈り物と呼べる代物だった。
「……綺麗ね」
　廃鬼師は、鍵摂者と人間の『部品』から出来ていながら、そのどちらにもなれず、どちらにも戻れぬ存在だ。そして、鍵摂者としての心も、人間としての心も、そのどちらもが不完全だ。
　都市の守護を第一にプログラムされている彼らには、生き物として必要な、様々なものが欠けている。
　しかし、美しいものを美しいと、愛しいものを愛しいと、そう思うことは許されているようだった。それが、プログラムとして入力されたものなのか、それとも自然に湧きいずる感情なのかは、彼らには判らないけれど。
「オレたちは鍵摂者としても人間としても出来損ないだが、それでも……雪を見て美しいと感じることは出来るんだな。それを、少し、技術者たちに感謝したいと思った」
　両手に雪を受け止めながら十守が笑う。
　百野が、千鎖が、同じ仕草で微苦笑する。
　体温を持たない彼らの掌で、雪は白々と輝いている。
「壱衛」
「ん」
「お前はどうだ」
「……どう、かな」
　雪とは深々と降るものだと古い記憶媒体が告げている。
「ただ」
「どうした」
「叶うならば、天から地へこれが降る様を見てみたいと、思った」
「……そうか」
　微苦笑した十守が、壱衛の肩を叩く。
　壱衛は雪片のロンドを見つめながら、静謐に沈む都市を思った。

　雪は、少しずつ灰色の世界を純白に染め上げようとしていた。

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