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日記、サイト運営に関する諸々及びPBWゲームへの呟きをつれづれなるままに。
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やっぱり、どうも調子が微妙です。
普段元気なだけに、こういうときぐったりしてしまっていけませんね。
今日も午後から年休を取って帰ってきまして、小説をちょっと書いた後はもうずっと寝ていました。次なるプラノベのお届けは週末以降になりそうです。
企画品のお届けも『冬休み中』くらいのまったりになると思われ。住所下さった方々、どうもありがとうございました。もう少々お待ちくださいませ~。

あ、そして昨日の分のプラノベ、公開されましたね。
オファー、どうもありがとうございました。
私にしては短いお話になりましたが、これはあまりごてごて書くとかえって無粋かなあと思ったので、シンプルかつストレートに書き上げました。気に入っていただけるといいのですが。


あと、以下はなんとなくそんな気になって書いてみた、クリスマス中の廃鬼師たちの一幕。悲壮感がないのは仕様です。固有名詞とかミニ情報とか色々出してみたので、ご参考までに。


 12月25日

 何かの雰囲気を感じて、壱衛はふと顔を上げた。
「どうした、壱衛」
 すぐ隣で、壁にもたれて座っていた十守が、壱衛のそんな動作に反応して首を巡らせる。
「……いや」
 気の所為だったらしく、周囲には何の変化もなかった。
 壱衛は静かに首を横に振り、また意識を都市へと拡散させる。
 ――百野は電力消費を抑える低速モードに切り替えて『眠って』いるらしい。
 廃鬼師は普通、都市そのもののはらむ微弱な電力を全身で吸収して永久稼動できるようになっているが、それもシステムを大凶兆に取り込まれてしまえばかなわなくなる。
 攻撃に特化したパワー型である彼は、廃鬼師の中ではもっともエネルギー消費が激しいので、今のような状況においてそれは最善の方法だ。電力消費が激しすぎるとデータを保っていられなくなることもあるから、どちらにせよ早めに手を打たなくてはならない。
 エネルギーが切れた廃鬼師ほど役に立たぬものはないのだ。
 二度三度創ることが難しい優秀な廃鬼師は、ネット内の共有フォルダ【スフィア】にデータが蓄積されているが、それとて今のこの状況下で悠長に再生作業をするわけにもいかない。
「レピドライト集積塔からの交信は?」
「微量だ。微量過ぎて私では受信出来ない」
「だったら、俺たちの誰も、受信出来ないってことだな」
「……大凶兆の胎動がもう少し収まってからでないと無理だろう。あれは電道をかき乱しすぎる」
「千鎖、開錠は出来そうか?」
 十守の問いに、千鎖が壁にコネクタを接続したままで苦笑する。
「壱衛と同感だわ。大凶兆の歪波が収まり、電道と普遍サーキットが落ち着かないことには、わたくしにはどうしようもない」
「……ではオレたちは、もうしばらくはここに詰め込まれたまま、ということか……やれやれ」
「クレイドルの召喚が出来ないどころか、自然充電すら出来ないのでは、休息どころではないからな。――ふたりとも、電力の残量はどうだ」
「基底現実時間で言えば12000分弱と言ったところ、か。廃鬼の襲撃を受ければ更に減少するだろうな」
「わたくしは8000分くらいかしらね……あまり、猶予はないわ」
「切れたら切れたでフォルダに戻るだけのことだが、今は暢気に【スフィア】で休憩している場合じゃあないしな」
「……そうか。何なら私の電力を分けてやる、切羽詰ったときは言え」
「陽炉システムって便利だな。扱いは大変なんだろうが」
「そうね」
 大凶兆を止めるべく奮闘して、どれだけの時間が経ったのか、データ管理はお手の物である廃鬼師たちですら面倒臭くて――その無意味さを理解していて、なのかもしれない――カウントをやめていた。
 状況は悪化する一方で、Solitudeの蔓延は激しく、すでに何十、何百もの『那由多機構』メンバーが廃鬼と化し、大凶兆の一部になった。
 厳重に守られたシャングリ・ラも、決して完璧に安全なシェルターというわけではなく、毒は間違いなくこの世界全体を蝕んでいる。長い長い時間をこの地下世界とともに存在してきた廃鬼師たちには、建造物のひとつひとつ、部品の一欠片一欠片に、毒がにじんでゆくのが判るのだ。
 このままでは、この地下世界は、地上に呪われた贈り物を無理強いする救いようのないムービーハザードになってしまう。
「でも……何故かしら」
 かすかに笑う千鎖には、悲壮さはなかった。
 否、壱衛にも十守にも百野にも、ない。
 彼らには、絶望するという機能がついていないのだ。
 彼らは、この世界が存在する限り、もしくは再生もかなわぬほどプログラムごと粉々にされない限りは、諦めるということが出来ない。
 廃鬼師とはそういう存在なのだ。
「どうした、千鎖」
「ええ。おかしいかしらね、わたくし、少し楽しい気分なのよ。地上の人間たちと言葉を交わすことが出来たからかしら」
「百野も言ってたな、それ。二千年機能してきて『ちゃん』付けで呼ばれたのは初めてだった、って」
「ええ。わたくしそれを聞いて笑ってしまったもの。だから……不謹慎かもしれないけれど、わたくし今、悪くない気分なの」
「オレもだ」
 そう、笑みを交し合ったあと、千鎖はほんの少し哀しげに目を細め、
「……万己は、零覇は、どうかしらね」
 言って灰色の天井、上層階の地面に当たる高い『空』を見上げた。
「絶望することが出来たから、万己は大凶兆になったのかしら」
「絶望だけが理由なら、零覇も大凶兆にならなきゃおかしい。あいつも精神プログラム内に『絶望』が自然発生していたはずだ」
「ああ、そうね。では、何が万己を歪めさせたのかしら。何があの優しい子の願いを歪めてしまったのかしら」
「それが判れば、オレは今頃廃鬼師じゃない何かになってるよ」
 十守が肩をすくめる。
 2500年前のもっとも優秀な技術者が、死んだ恋人に似せて創ったという十守は、長い時間の情報の蓄積もあり、旧仕様の廃鬼師も含めてもっとも人間的な反応をする。肩をすくめるなどという仕草はその最たるものだろう。
「……手を捜そうぜ。何か、あると思うから」
「ええ」
「せっかく、あいつらが、都市再生プログラムを見出してくれたんだ、このままにはしたくない」
「そうね……」
 千鎖がそう微笑んだ、その時、現在彼らが足止めされている階層の空気が明らかに変化した。気温がぐっと下がり、空気が清冽さを増したのだ。
 と、

 ふわり。
 ふわ、ふわり。

 視界を、優雅な羽毛片のような、白くてやわらかいものがいくつもかすめてゆく。
 目を見開いた千鎖がそっと百野を起こし、上空を見上げる。
 空のないこの都市に気候は存在しない。
 そのはずだった。
「なんだ、これは……?」
 十守が不思議そうに純白の舞う天井空間を見上げ、手を差し伸べる。
 壱衛はその物質をざっとスキャンしたあと、舞い降りた白片を金属製の手の平で受け止めた。
「水蒸気が空中で昇華し結晶となって降る現象だ。確か、雪と言ったはずだが」
「雪……」
 旧世界においては冬という季節の代名詞であったらしい気候現象だ。
「どうして、今、ここに」
 両手で雪を受け止め、千鎖が首を傾げる。
 百野は不思議そうに、言葉なく空を見上げている。
「……贈り物、かな」
 十守が目を細めて呟いた。
「贈り物? 誰の?」
「――……『外』からの」
 鉄塊と灰色に満ちたこの世界に、雪の純白はまぶしいほど清浄だった。
 ありえないはずの現象は、局地的なムービーハザードの一種だったのだろうか、確かに、『外』の……地上からの贈り物と呼べる代物だった。
「……綺麗ね」
 廃鬼師は、鍵摂者と人間の『部品』から出来ていながら、そのどちらにもなれず、どちらにも戻れぬ存在だ。そして、鍵摂者としての心も、人間としての心も、そのどちらもが不完全だ。
 都市の守護を第一にプログラムされている彼らには、生き物として必要な、様々なものが欠けている。
 しかし、美しいものを美しいと、愛しいものを愛しいと、そう思うことは許されているようだった。それが、プログラムとして入力されたものなのか、それとも自然に湧きいずる感情なのかは、彼らには判らないけれど。
「オレたちは鍵摂者としても人間としても出来損ないだが、それでも……雪を見て美しいと感じることは出来るんだな。それを、少し、技術者たちに感謝したいと思った」
 両手に雪を受け止めながら十守が笑う。
 百野が、千鎖が、同じ仕草で微苦笑する。
 体温を持たない彼らの掌で、雪は白々と輝いている。
「壱衛」
「ん」
「お前はどうだ」
「……どう、かな」
 雪とは深々と降るものだと古い記憶媒体が告げている。
「ただ」
「どうした」
「叶うならば、天から地へこれが降る様を見てみたいと、思った」
「……そうか」
 微苦笑した十守が、壱衛の肩を叩く。
 壱衛は雪片のロンドを見つめながら、静謐に沈む都市を思った。

 雪は、少しずつ灰色の世界を純白に染め上げようとしていた。

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